エディター 高橋智彦さん
エディター/ライター
今回のインタビューは、フリーランスのエディター/ライターとして、『SHOES MASTER』編集長や『Runners Pulse』副編集長を務める榎本一生さんです。「フイナム ランニング クラブ♡」の部長でもある榎本さんが考える、ランニングの魅力とは?!?
インタビュアー(以下I):
榎本さんは普段どれくらいの頻度で、どういったコースを走っているのでしょうか?
榎本(以下E):
週4、5回ほど走っています。雨の日や体調が悪い日以外、走れる日は走るようにしていますね。自宅が代々木公園に近いので、公園内をランニングコースにすることが多いです。同じ道ばかりだと飽きてしまうので、代々木公園の中でも舗装されている内周と土が広がる外周を走り分けたりして、1回で最低でも10km走ることを目安にしています。もう少し長い距離を走りたいなと思ったら、皇居の方まで足を伸ばすこともあります。
I:
走り始めたきっかけは何だったんですか?
E:
6年前の12月、仕事でホノルルマラソンの取材をしたことです。当時はランニングに全く興味はなかったんですが、ホノルルへ行ってみると、ハワイを走るのも気持ちよさそうだなと何となく思ったんです。当然ランニングウェアも持っていませんでしたが、実際に走ってみたら想像以上に楽しい。帰国してから、さっそくランニングウェアやシューズを買って走り始めると習慣化してしまいました。学生の頃にテニスをしていた以来スポーツから離れていたので、30代半ばでランニングの魅力にすっかりハマったのには自分でも驚きでした(笑)。
I:
興味がなかったランニングが、一つの仕事をきっかけにたちまち本格化したわけですね。マラソン大会へも出場したのでしょうか?
E:
僕が初めて出場したマラソン大会は、実は海外のものなんです(笑)。でも最初に挑戦しようと思ったのは2013年開催の東京マラソン。ランニングを始めて7、8ヶ月経った頃に勢いでエントリーしたら10倍超の倍率をかいくぐって当選してしまったんです(笑)。でも東京マラソンへの出場が決まったのが9月で、本番は翌年2月。その間に別の大会に出られないかと調べたところ、日本国内で行われていた大会はどれも、すでにエントリーが締め切られていました。そこで海外にまで範囲を広げて調べてみたところ、見つけたのが12月に台北で行われていたマラソン大会。そのハーフ部門に友人とエントリーして、1時間53分でゴールしました。その後は東京マラソンも完走して、ロードのマラソン大会は国内外問わず積極的にチャレンジしてきました。
I:
榎本さんの最初のレース体験が海外のハーフマラソン。そしてその後、ランニング歴1年ちょっとで東京マラソンを完走と、取り組み始めてからのめり込むまでが本当に早いですね(笑)。
E:
僕は何事にも、始めると没頭するタイプなので(笑)。スニーカーにしてもそうなんですが、一度興味を持つと突き詰めないと気が済まないんですよね。その反面、飽きっぽいところもあるんですが、ランニングは5年間続けてますね。
I:
それだけ続けられているランニングの魅力は何だと思いますか?
E:
いろいろなランニングシューズを、自分で履いて実際に走ることで、違いや個性を楽しめるというのが大きい気がします。走るペースや、コーディネートのための色やデザインだったり、目的に合わせて選ぶのが楽しいんです。特にトレイルランニングではその日の天候、路面の状況、地形をも考慮して靴選びすることが、足への負担や、結果にも大きく関わってきます。シューズを試行錯誤した末、「今日これ履いてきて正解だったな」ということもあれば、「失敗したな」と思うこともあり、毎回のレースを新鮮な気持ちで挑めるんです。
I:
シューズの機能やトレンドを伝えるのが、『SHOES MASTER』や『Runners Pulse』の編集に携わる榎本さんの仕事でもあるんですよね。
E:
確かに、シューズは普段の仕事でも触れる機会がたくさんありますし、ランニングを始めるずっと前からの趣味です。しかし、今でこそ、ランニングギアの情報を発信する『Runners Pulse』の副編集長を担当していますが、僕がずっと注目していたのはいわゆる街履き用のライフスタイルに浸透したスニーカーで、パフォーマンスを重視したランニングシューズはノーマークだったんです。ランニングを始めてからは、普段からもランニングシューズを履くようになるほど夢中になっちゃいました。シューズに対する好みさえも変わってしまったんです。
I:
ランニングにおける今後の目標についてお聞かせください。
E:
実はロードのフルマラソンに関しては、やりきった感覚があるんです。というのも、去年の大阪マラソンを3時間18分で完走したんですが、それまでのベストを大きく更新する驚きのタイムだったんです。だから、これ以上速い時間で走るのを想像できなくて、タイムを追い求めるのはひと段落つきました。一方で、僕が最近ハマっているのがトレイルランニング。今年の1月にも、香港で行われた「Vibram Hong Kong 100km」というトレイルレースを走りました。そして、今出場を狙っているのが来年4月末開催予定の「ウルトラトレイル・マウントフジ」。距離にして約160kmというロングトレイルのレースで、一番の目標です。
I:
榎本さんのお話しを聞いていると、ランニングを楽しむというよりは、ひたすらに自分の限界を追求しているような印象を受けます。グループで走るよりお一人で走ることが多いのでしょうか?
E:
確かにランニングは僕にとって、自分一人きりになる時間でもあるかもしれません。大人になって、社会にでると、なかなか一人になる時間がない。仕事では取材や打ち合わせでいろいろな人に会って、家に帰ると妻と子供がいて、ずっと誰かと接している。でもランニング中は、なんなら携帯も持たないようにしてまで、外界の干渉を断って走ることもあります。絶え間なく人と接する日々だからこそ、一人自分と向き合う時間を確保するのは大事なのではないかと思うんです。
I:
最後に、榎本さんにとってのランニングとはどういうものなのか、教えていだけますか?
E:
あえて一言で表すなら、一人で自分を追い込むものですかね。走るときの苦しさや辛さというのは、絶対に避けられないものだと思うんです。むしろ、それを楽しめる人でないと、ランニングって続けられないかなと。マラソン一つとっても、それ自体が苦しいからこそ、前夜や打ち上げに飲む酒が一層おいしかったりするんですよね(笑)。なので、実は「ファンラン」という言葉にも少し抵抗があります(笑)。もちろん、僕にとってのランニングも遊びの域を出てはいないのですが、フルマラソンにしても、毎回35kmを超えたあたりで、何でエントリーしちゃったんだろうと後悔するほど、道中ずっと苦痛が続きます。でも不思議なことに、ゴールした瞬間それまでの苦しさが全部楽しい思い出にすり替わるんです。ランニングの本質というのは、真剣に走って苦しみを乗り越えた先にあるもので、全力で走って、本気で苦しまないと得られない充実感があるんです。
I:
以前、同じ「フイナム ランニング クラブ♡」の副部長・山本さんにもお話しを伺いましたが、部長と副部長でランニングに対する考え方が真逆ですね。やっていることは同じなのに、楽しみ方が人によっては全く違うというのもランニングの魅力だと思います。榎本さん、本日はどうもありがとうございました。
PROFILE
職業:エディター/ライター
榎本一生さん
フリーランスのエディター/ライター。『SHOES MASTER』編集長、『Runners Pulse』副編集長を務める。「フイナム ランニング クラブ♡」部長でもある。マラソン歴は5年以上。国内外問わずレースに意欲的に参加している。